地域資源情報

地形(新旧・高低・長短の多様な地形が集積)

約2,000万年前、日本列島がアジア大陸から離れていく過程の中で、その真ん中で折れて造られたのが深いフォッサマグナ(地質学的な溝)です。この地域は、このフォッサマグナの海に土砂が流れ込むなどして形成された厚い地層の上にあります。
したがって、約300万年前に列島全体が隆起を始めましたが、上越市周辺は約100万年前でもまだ海や平地であり、例えば妙高山などの火山、短期間に1,000m以上成長した関田山脈、大幅に経路変更をした信濃川(千曲川)、全国有数の地すべり地帯などの特徴的な地形は、これより後に作られました。一方、フォッサマグナの外縁部にあたる糸魚川市などには、数億年前の古い地形も残っています。
また、国内有数の傾斜と短さをもつ関川水系が象徴するように、短い距離の中に、砂丘、平野、丘陵、高山が存在している一方、国内最長の信濃川やそれらが作り出した盆地があり、両者が隣り合う地域にあります。わずか100万年前まではこの関川と信濃川が一緒のものであり、現在の対照的な地形は奇しくも関田山脈の隆起などがもたらした結果でもあります。
このように古い地形と新しい地形、急峻な地形と緩やかな地形がコンパクトにまとまった国内有数の地域ということもできます。
山脈や日本海が形成された結果、国内有数の豪雪地帯となり、豊富な雪解け水と急峻な地形を利用して、水力発電が行われました。フォッサマグナの地形・地質は、石油・天然ガスの基となる層や地殻変動により石油・天然ガスが集まりやすい特徴があり、石油・天然ガスが採れやすい地域となりました。
また、周辺を高い山脈に囲まれた地形のため、その地形的条件が影響して交通の要衝となり、高い山々は人々の信仰の対象となり、修験道など修行の場ともなりました。日本百名山に選定された山も多数存在します。火山が多いことなどから温泉も多く、2,000m級の山々を中心に大規模なスキー場もできました。地すべりは災害という側面だけではなく、米づくりの適地や美しい棚田の景観なども生み出しています。

信越県境地域の特徴

歴史の多様性(古い~新しい)

  • 糸魚川―静岡構造線の西側は1億年前より古い岩石、東側は2,000万年前より新しい岩石。糸魚川市内の断層ではその両方を見ることができる。
  • 新潟・長野県境の関田山脈は、約100万年前に海や平地であったところから隆起や褶曲によって1,000m級の高さに成長した山脈。“若い”山脈としてはトップクラスの高さを持つ。
  • 信濃川(千曲川)は、約40万年前まで上越地方に流れ込んでいたものが、急激に形成された山脈や丘陵などとともに大きく曲がり、魚沼地方へ流れ込む。

集中する地すべり地帯

  • 新潟県における地すべり防止区域の指定箇所は、数・面積ともに全国1位。中でも西頸城、東頸城、魚沼の丘陵地帯に集中する。
  • 長野県における地すべり防止区域の指定箇所は、数・面積ともに全国3位。中でも長野・北信地域の一部(千曲川やその支流の犀川、姫川で囲まれた地帯)に集中する。

地形の多様性(高~低・短~長)

  • 関川水系は、2,000m以上の高山を水源とした一級水系の中で4番目に短いことから、その傾斜の大きさと短さは国内有数。糸魚川市内での標高差2,800mも国内有数。このことから、上越地方には短い距離の間に海岸・砂丘・平野・丘陵・高山などの多様な地形が存在する。
  • 信濃川(千曲川)は日本最長の河川。源流は埼玉県、山梨県との県境にある甲武信ヶ岳にあり、長野・北信地方や魚沼地方を経由して新潟市に至る全長367kmの河川である。

その他特徴的な地形

  • 信濃川の津南町付近は、日本最大級の河岸段丘と称されることもある。
  • 清津峡(十日町市)は日本三大渓谷の一つと称される。

◆ 信越県境付近の地形・標高

出所)国土地理院数値地図および日本百名山協会ホームページをもとに作成

因果関係

フォッサマグナの上の地形(“最近”までは海と平地)

  • 日本誕生に深く関わるフォッサマグナの西端付近に位置するため、新旧両方の地層が存在する。
  • 約2,000万年前、日本列島はアジア大陸から離れながらその真ん中で折れ、深さ3,000mのフォッサマグナの海ができた。そこに土砂が流れ込むなどして、砂や泥の厚い地層が形成され、約300万年前には列島全体が隆起を始めたが、約100万年前の上越市周辺はまだ海や平地で、当時は千曲川が流れ込んでいた。

豪雪地帯の形成

  • 日本海や高い山脈が形成された結果、日本海で発生した積雲が山脈にぶつかり、大量の雪が降るようになった。

国産エネルギーの生成

  • フォッサマグナの地形・地質に特有の地殻変動により、石油・天然ガスが集積しやすく、採掘しやすい地形となった。
  • 豪雪による豊富な水量とともに、河川の傾斜の大きさを利用して、水力発電が行われた。
上越地方 魚沼地方 北信・長野・大北地方
2,000万年前 日本列島がアジア大陸から離れていく過程の中で、その真ん中で折れて造られたのが深いフォッサマグナ(地質学的な溝)ができる。
1,000万年前 信濃川が流れ込む
100万年前 信濃川が流れ込むようになる 山が隆起する
現在

地域のことを考えてみよう!

日常生活においては大地の特徴を感じる機会は少ないかもしれませんが、まちは大地の上に造られたもので、その土地の地形・地質の影響を多分に受けています。身近で見つけられる地形・地質を探してみましょう。

主な参考文献

フォッサマグナミュージアム(2006):フォッサマグナってなんだろう / 成瀬洋(1977):日本島の生いたち、同文書院 / 小林巌雄・国土交通省北陸地方整備局(2007):信濃川・越後平野の地形と地質、北陸建設弘済会 / 市川正夫(2013):改訂版やさしい長野県の教科書 地理、しなのき書房

自然環境

資料編

日本列島の面積は、山地と丘陵で全体の約7割を占めており、世界的に見ても山地が多く、急峻な地形です。これは、日本列島が新しい造山帯に属しているため山地の隆起が激しく、降水量の多さにより河川による浸食もはげしいことに由来しています。
約2,000万年前、日本列島はアジア大陸から離れていき、その真ん中で折れてフォッサマグナの海ができ、そこに土砂が流れ込むなどして砂や泥の厚い地層が形成されました。約300万年前には日本列島全体が隆起を始め、その後の地殻変動や火山活動、河川による土砂の堆積などで山や平野が形成されました。現在の地形はそのほとんどが約200万年前以内に形成されたものといわれています。
地球は約46億年の歴史をもち、主に生物の進化の過程をもとに時代が区分されています。最も新しい時代は約260万年前から現在までの「第四紀」とされていますが、現在見られる地形のほとんどが、この新しい時代に形成されています。

◆ 標高

出所)国土地理院ホームページをもとに作成

◆ 地質時代と主なできごと

出所)産業技術総合研究所地質調査総合センターホームページ

信越県境地域の特徴

著名な山々(日本百名山)

日本百名山協会ホームページには、故深田久弥氏の名著「日本百名山」が定めた百座の山々を掲載している。
都道府県別の数をみると、長野県が断トツの29座であり、新潟県も4番目に多いなど、本州の中央部に半数以上が集中している。【下表】
このうち信越県境付近に位置する百名山には、白馬岳(正確には富山・長野県境)、雨飾山、火打山、妙高山、高妻山、苗場山の6座がある。
また、この地域内にある3つの国立公園(妙高戸隠連山、上信越高原、中部山岳)全域に対象範囲を広げると、20座以上にもなる。

【日本百名山の数ランキング】
順位 都道府県名 最高峰(標高)
1 長野県 29 穂高岳 (3,190m)
2 山梨県 12 富士山 (3,776m)
3 群馬県 11 奥白根山 (2,578m)
4 新潟県 9 火打山 (2,462m)
4 富山県 9 立山 (3,015m)
4 北海道 9 大雪山 (2,291m)
7 岐阜県 8 穂高岳 (3,190m)
7 静岡県 8 富士山 (3,776m)

備考)複数都県に跨る山は、それぞれの都県の山として重複計上した。
出所)日本百名山協会ホームページをもとに作成

古い地形と新しい地形

糸魚川―静岡構造線の西側は1億年前より古い岩石、東側は2,000万年前より新しい岩石。糸魚川市内の断層ではその両方を見ることができる。

この地域では、世界最古のヒスイをはじめ多種の岩石をみることができる。これらの多様な地形や情報発信体制などが評価され、「糸魚川ジオパーク」が2009年に日本で初めてユネスコの世界ジオパークに認定された。

【参考文献など】
  • フォッサマグナミュージアム(2006):フォッサマグナってなんだろう、1頁
  • 糸魚川ユネスコ世界ジオパークホームページ
    https://geo-itoigawa.com/index.html

新しい地形(高い山々)

新潟・長野県境の関田山脈は、約100万年前に海や平地であったところから隆起や褶曲によって1,000m級の高さに成長した山脈。“若い”山脈としてはトップクラスの高さを持つ。

数億年にわたる地質の長い形成時間を考慮するならば、100万年前に生まれた山は“若い”といえる。
成瀬(1977)が示した日本地図を目視した限りでは、100万年前に海や平野であったと思われる地域は、現在も大部分が海や平野である。1,000m以上の山地になっている箇所は、全くないとまでは言い切れないが、ほぼないものと推察される。【下図】
地質学的には、「第四紀1)の海成層(海底に堆積してできた地層)で稜線部が構成される山脈としてはトップクラスの高さ」という表現もできる。ちなみに、当時の状態が海か山かに関わらず、第四紀の隆起量のみでいえば、北アルプスが日本一の規模といわれている。

その他の高い山々
  • 小谷村東部
    100万年前ではなく200万年前は海底であって、関田山脈より高いところには、長野県小谷村の東の山脈あたりがあるとの報告もある。
  • 火打山(非火山)
    火打山(2,462m)は、200万年前はすでに陸地であったが、火山を除くと日本でもっとも高い山のグループといわれている。
  • 妙高山・焼山(火山)
    隆起や褶曲に限定せず、噴火によって形成された山々の中には、富士山をはじめ1,000mを超えるものが数多く存在する。
    この地域内でも、妙高山(2,454m)は約30万年前からの噴火によって形成されたとされる。焼山(2,400m)は約3,000年前の噴火で形成された、複成火山(休止期をはさんで複数の噴火活動を繰り返して生成した火山)では日本で一番若い火山といわれている。

この地域では、世界最古のヒスイをはじめ多種の岩石をみることができる。これらの多様な地形や情報発信体制などが評価され、「糸魚川ジオパーク」が2009年に日本で初めてユネスコの世界ジオパークに認定された。

このように比較的新しい地形に限ってみると、国内トップクラスの高さといえる地形がこの地域に存在するということができる。

【約100万年前の日本列島】

出所)成瀬洋(1977):日本島の生いたち

【参考文献など】
  • 成瀬洋(1977):日本島の生いたち、同文書院
  • 高野武男・関田山脈団体研究グループ(2008):新潟・長野両県境の関田山脈と飯山盆地の形成に関する造地形成運動の研究、地学雑誌
  • 小松原琢(2010):新潟県の地形形成と災害環境=第四紀258万年前の歴史=、地質ニュース676号、37-44頁
  • 地質調査総合センター:20万分の1日本シームレス地質図
  • 気象庁ホームページ(火山)
  • 早津賢二(2015):新潟焼山火山-その素顔と生い立ち-、ケーナール、32頁
【参考】
1)第四紀について
  • 地質学上の時代は、主に生物の進化の過程をもとに区分されており、「第四紀」は最も新しい時代である。
    具体的には約260万年前から現在までのことを指すが、この定義は2009年に修正されたものであり、古文献では181万年前から現在までとするものもある。