開催報告

信越県境エリアの魅力を探るトークイベント
開 催 報 告

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1911年、オーストリアのレルヒ少佐が上越市に伝えたスキーは、信越県境エリアである野沢温泉、妙高、湯沢、白馬などにスキー観光地としての礎を築いたほか、全国へと展開していきました。

それからちょうど110年、これを機にスキーと共に歩んできた地域の歴史をふりかえり、雪国の未来を考えるきっかけになればと思い、地理、歴史、スポーツ、経営など様々な切り口からスキーと地域の関係について学ぶ、シリーズ「スキーと地域づくり」を開催しました。 [文責:事務局]

VOL.7 国内のスキーリゾートの成り立ちと信越県境エリアの特徴

日 時:2021年9月16日(木)18:30~20:00
会 場:オンライン(ライブ・録画配信)
ゲスト:呉羽 正昭さん(筑波大学生命環境系教授)

VOL.8 上越発、日本スキーことはじめ

日 時:2021年11月5日(金)18:30~20:00
会 場:オンライン(録画配信)
ゲスト:荒川 将さん(上越市教育委員会学芸員)

VOL.9 新潟県のスキーの魅力

日 時:2021年11月19日(金)18:30~20:00
会 場:オンライン(録画配信)
ゲスト:柳 一成さん(新潟県スキー連盟専務理事)

VOL.10 野沢温泉スキーものがたり

日 時:2021年12月3日(金)18:30~20:00
会 場:オンライン(録画配信)
ゲスト:片桐 幹雄さん(株式会社野沢温泉 代表取締役社長)

VOL.7 国内のスキーリゾートの成り立ちと信越県境エリアの特徴

シリーズ第1弾は地理の視点から。地理学がご専門であり、スキーリゾートに関する著書も執筆されている筑波大学の呉羽先生をお招きしました。会場を設ける予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、急遽、オンラインでのライブ配信としました。
呉羽先生から、日本のスキーリゾートの盛衰や信越県境エリアの特徴や展望についてお話しいただいた後、参加者とのトークセッションを行い多岐にわたるトークが繰り広げられました。

  • 全国的にスキー人口が減少しているが、特に雪国での減少が顕著。
  • 生き残り戦略として、インバウンドツーリズム、スキー以外の雪による観光体験、冬季以外の観光の推進などが行われている。
  • ヨーロッパでは、子ども向けのスキー学校を充実するなど、子どものスキー人口を増やす取り組みを行っている。
  • この地域は海外に比べて雪の量が圧倒的に多く、生活と密接である。雪をポジティブに捉えることが必要。
  • 地域住民が楽しみ方を認識し、「長期滞在できる楽しみ方を発信すること」や「ガイドとなって来訪者と楽しみを共有すること」ができるのではないか。

トークセッション
(上段左:聞き手 内海さん、上段中:ゲスト 呉羽さん、上段右:参加者 櫛引さん)
(下段左:参加者 橋本さん、下段右:参加者 大西さん)

VOL.7ゲスト:呉羽 正明さん
[筑波大学生命環境系 教授]

長野県生まれ。小布施町出身。須坂高校、筑波大学、インスブルック大学大学院を卒業後、愛媛大学講師を経て、現職。ご専門は人文地理学、観光地理学、ヨーロッパ地誌。著書に「スキーリゾートの発展プロセス 日本とオーストリアの比較研究」(2017年、二宮書店刊)などがある。

VOL.8 上越発、日本スキーことはじめ

シリーズ第2弾は歴史の視点から。上越市にある日本スキー発祥記念館を会場に、館内を紹介いただいた後、日本スキー発祥の地の意義などについてお話を伺いました。

  • 単なるスキーの伝来ではなく、スキーに関する様々な“ことがら”が高田(上越市)から始まった。
  • 軍隊だけでスキーを独占せずに民間にも開放し、新しいまちに生まれ変わる手段としてスキーを使おうとしていた。
  • 高田から「スキー指導」「スキー倶楽部」「スキー用具」という要素が組み合わさった形(高田モデル)が全国に広まることでスキーが普及した。
  • 当時は高田のスキーを持っていることがステータスであり、大正から昭和にかけて高田はスキー用具の一大産地となった。
  • スキーの資料がまとまっているこの地域は研究者の拠り所になり得る。スキーという資源を使って連携していくことが大事。

会場:日本スキー発祥記念館(左:聞き手 内海さん、右:ゲスト 荒川さん)

上越市金谷山スキー場のレルヒ像

VOL.8ゲスト:荒川 将さん
[上越市教育委員会 学芸員]

2010年に上越市役所採用(学芸員)。上越市立総合博物館(2018年より歴史博物館)を経て、2021年より上越市教育委員会文化行政課。専門は日本近代史(明治維新史)。

VOL.9 新潟県のスキーの魅力

シリーズ第3弾の会場は十日町市の松之山温泉のお宿。松之山でのスキーのことや競技スキーを通じた海外経験、スキーの課題と可能性などについて、新潟県スキー連盟の柳さんからお話を伺いました

  • 除雪もなく開店休業状態だった昔の松之山では、スキー場を作って観光面でも地域を動かしたいという思いから、地元住民が協力して手作りのリフト・スキー場を作った。
  • スキーの海外合宿を最初に合同で始めたのは新潟県と長野県。海外合宿で、文化の違いを知ること、海外の生活にチャレンジすることなどの経験ができる。
  • 海外では地域の文化・観光の中にスキーが組み込まれているが、日本ではスキー場だけが切り離されているように感じる。
  • 雪という資源をスキーだけでなく、産業や文化でも大切にして、環境のことを考えていかなければいけない。
  • 雪を楽しむこと、遊ぶことにもっと多様性がある。大人が楽しむ姿を見せるべき。「健康」がキーワードになるかもしれない。

会場:松之山温泉 ひなの宿 ちとせ(左:聞き手 井口さん、右:ゲスト 柳さん)

松之山スキー場

VOL.9ゲスト:柳 一成さん
[新潟県スキー連盟 専務理事]

十日町市松之山温泉出身。松之山温泉ひなの宿ちとせ 代表取締役社長、松之山温泉合同会社まんま 代表社員、合同会社雪国食文化研究所 執行社員 などを務める。

VOL.10 野沢温泉スキーものがたり

シリーズ第4弾の会場は野沢温泉スキー場。元オリンピック選手であり、野沢温泉スキー場の運営会社の社長である片桐さんから、野沢温泉でのスキーのことやスキー場経営などについてお話を聞きました。

  • 最初にスキー場を作ったのはスキー倶楽部。その後村に移管する際の交換条件として、人材育成のための費用を出すようにした。今でもジュニア育成に活用されている。
  • 世界的なスキー場があるサンクトアントンと50年近く交流を続けている。官民一体となって相互に行き来するこの交流は全国でも珍しい。
  • 多くのスキー場ができた中で、スキーヤーが減り需給バランスが崩れてしまったが、野沢温泉スキー場では、中長期的に計画的な設備投資を行うこととした。
  • 目指すところはオンリーワンの野沢スタイル。一気に人が来るというよりコツコツと満足度を上げていくことが必要。
  • 村の子どもの親に「コンシェルジュになってくれ」とお願いしている。困っている人がいたら声をかける、地元の人にそうされたら嬉しい。それを見ていた子供はどう思うか、それが一番の教育。

会場:野沢温泉スキー場(左:聞き手 井口さん、右:ゲスト 片桐さん)

野沢温泉スキー場と野沢温泉村

VOL.10ゲスト:片桐 幹雄さん
[株式会社野沢温泉 代表取締役社長]

長野県野沢温泉村生まれ。アルペンスキーヤーとして1976年のインスブルック、1980年のレイクプラシッドオリンピックをはじめ数々の世界大会に出場後、今日に至るまでコーチ、監督、スキー連盟理事などとして国内スキーヤーの指導・育成に貢献。

このスキーシリーズでは、この地域の特徴や先人たちの熱い想い、地域づくりとの深い関わりを学び、スキーを通じた人々の交流や地域関連携、人材育成などの可能性も感じることができました。スキーブームを経て、様々な課題がありますが、まずは地域に住む私たちが、スキーを好きになって楽しむこと、そしてそれを伝えていくことが大切であると感じました。

参加者からの感想

印象的だったこと、大切だと思ったこと

  • スキーに関するデータを見ることが新鮮だった。スキー場の開発状況、スキー人口など初めて見た。
  • スキー場の環境、生い立ちと、繁栄と衰退など、数字データをもとにした説明のおかげで、今日のスキー場のありさまが理解できました。
  • 現状を知ることは大事だと思いました。
  • 都市部より雪国のスキー減少の割合が高く、新潟県や長野県では20年間に6~7割も減少していることに驚いた。
  • スキー人口が7割も減っていること
  • スキーツーリズムの衰退のところで、高速道路や二次交通が整備されていくと、日帰りでスキー場に足を運ぶ人が増え、その施設に「宿泊」する人が少なくなることが印象的でした。
  • 他国と比べて、良質な雪質の豊富ない積雪が日本にあるにも関わらず、スキー場設備が欧州等よりかなり遅れてるということ。
  • スキー人口の減少の原因が、学校でスキー授業が行われなくなったことではないか、という仮説
  • 信越県境エリアの冬の観光のウエイトが、ウインタースポーツにあるということの是非
  • 日本の日帰り、1泊2日が異常で世界では長期滞在が一般的であること
  • 日本人の休みは刹那的で、もっとゆったりと楽しむ方向に変えて行かなくてはいけないことに、改めて気付かされた。必ずしもそれは金銭的に裕福であることとは違うように思う。
  • 海外ではスキーをはじめる子供たち向けのスキー学校が整備されて、親もその間楽しめる環境があるということで、雪国に住む子どもたちがスキーを楽しめる環境が大切だと感じた。
  • これからは長期滞在してもらえるようスキーだけでなく他の雪遊びや地域の様々な楽しみ方を見つけること、地元の人と楽しみ方を共有していくことが大切だと感じた。
  • スキーだけでなく、地域を好きになる教育というものは子供のうちに徹底してやるべきだと、改めて思いました。
  • インバンド客と同じように、地元の人も「雪」という地域資源を楽しむ必要性を感じた。忘れていたことだと思う。
  • スキー以外のコンテンツに光を当てること、このエリアをブランド化すること、地域住民が喜ぶことが地域の魅力につながること、マッチングが大切であること
  • 高田が伝来ではなく発祥の地であることがよくわかりました。
  • スキーにとって如何に高田地区が重要であったかがうかがい知れました。
  • 南魚沼市では、上越国際スキー場など、当時は最新のリフトが動きナイター設備も整ったスキー場が当たり前だと思っていたが、山の向こう側の松之山温泉では、自分達でコースを作って練習したいたという状況や、スキー大会出場のために、何時間もかけて会場入りするなど、本当に想像を絶するご苦労話を聞いて、大変驚きました。この反骨精神がその後の成功体験や生き方に影響していると思い、感服しました。
  • バブル期のスキーブームにはストーリーがないけど、幼少期からのお話にはストーリーがある。だから、取り止めのない話のようでいてグッと引き込まれていく感じ。自分達が滑るゲレンデは自分達で踏み固めるという懐かしさ。
  • スキーも生活の一部として、一人ひとりが語れるようになっていけたら、それには昭和40年代に戻すことも選択肢になるのではないかと思いました。
  • 平日はインバウンド客、週末は国内客というポートフォリオを構築して、ある意味でリスク管理していたこと。
  • 親子客を無料にして、親はコンシェルジュとなって困っている客に声をかけ、子は親の姿を見て成長していく、そういうスタイルを作ったこと。

もっと知りたかったこと、知りたくなったこと

  • 海外では長期滞在が主流とのことだったので、過ごし方や受入側は設備・体制についてもっと知りたくなった。
  • スキー以外のリゾートとの比較、スキー以外のシーズンスポーツの状況、バブルのしまい方・落ち着けさせ方
  • 信越県境エリアの新しい取り組み、成功している事例、頑張っている事業者
  • 近隣地域間の連携について
  • 白馬、ニセコなどの先進事例
  • オーストリアの状況
  • ウィンタースポーツ人口を増やすため、小規模スキー場活性のためのアイデア
  • 10月に文化財登録された297点が気になりました。歴史博物館や発祥記念館で、全部を公開してほしい。
  • 赤倉地区のスキーリゾートの歴史
  • スキーをやめたいと思ったことはなかったか?誰のどのような支えや環境があってスキーを続けてこれたか?スキーを続けてきて良かったことは何か?
  • 一人乗りリフトやTバーリフトなど懐かしむのは日本人だけなのか。
  • 高齢者のスキーやスノボ、あるいはスノーシューなど、様々な雪の楽しみを合わせて教えてらえるとありがたい。

その他

  • 雪が多い地域では地元の人が数多くスキー場へ行き楽しんでいる印象。そのため、外から来た観光客も、多くの人で賑わっているスキー場に対して手が届きやすい印象を持つと感じた。
  • 雪が多い地域では地元の人が数多くスキー場へ行き楽しんでいる印象。
  • そのため、外から来た観光客も、多くの人で賑わっているスキー場に対して手が届きやすい印象を持つと感じた。
  • ささやかな住民の楽しみを見つけ、育む
  • 多雪のため雪掻きで疲弊することに着目するのではなく、多雪を楽しむというポジティブ思考でPRしなければいけないと思いました
  • 次の一手を考えるためのデータマーケティングが必要だと思う。
  • 富山の山奥のレストランのように、冬の食だけで人が来る、ということができないか?
  • スキー場を観光資源としている地域で、スキー場活性、ウィンタースポーツ人口増加の取り組みをしていきたいです。
  • 小さなことからスタートを考えていて、経験がなかったり、子どもの頃やっていて今はやっていない大人の地元住民の方に、楽しさを知ってもらうことから始めようとしています。
  • 先生のお話を聞かせていただき、始めようとしている取り組み方は、間違った方向ではないと確認できました。
  • 私が小さかった頃は、ゴム長靴が引っ掛けられるようにスキー板に1センチ幅くらいの革が張られているだけのものでした。(パワポに出てきたワラ靴式スキーの方がかなり立派に見えました。)同級生でハセガワスキーの「レルヒスキー」を持っているひとが羨ましかったです。
  • 日本スキー発祥の地という称号を一旦棚に上げ、あえて再び発祥の地論争を北海道と繰り広げ、ネット上で盛り上げていく。北海道さんの協力が必要ですが?

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