地域資源情報

18 寺 社

その他の参考情報

特徴の補足説明

a1 神社

– 諏訪信仰(諏訪神社・諏訪社) –

諏訪社(諏訪大社)は『古事記』国譲り神話において、建御雷神に降伏し諏訪に地に鎮まった建御名方神と、その后神である八坂刀売神を祀っている。神格には、狩猟神、軍神、風神・水神、漁業・舟運の神などがある。
諏訪神社の分布は全国に広がっているが、愛知県より以東の東日本に集中して見られる。
信濃国の一宮とされる諏訪社(諏訪大社)は、古代、七道諸国の神社のなかで朝廷において非常に高い位置づけであり、神社分布も長野県に多い。
しかし、数は新潟県の方が多く、新潟県内でも最も多い信仰となっている。新潟県内においては、新潟市から長岡市にかけてと上越市周辺に多い。
諏訪信仰の特徴とその広まりの関係については、水を掌る神として、信濃川の川筋に信仰を拡大したほか、主祭神・健御名方命の母が越後国にゆかりのある奴奈川姫命であることや、山間では狩猟の神としての霊験が浸透していたことなどの影響が指摘されている。
また武神として特徴から、信濃国に縁の深い武将たちにより広められたとも考えられている。
さらには、開拓・開田に信州の農民が多く越後へ移住してきたことや、上杉・武田両氏の争覇の影響を受けて信州の多くの人が頸城に流入し、その人たちの守り神として諏訪の神を分霊奉体して各地にその社を創建したとも考えられている。

– 白山信仰(白山神社など) –

白山信仰は、加賀・越前・飛騨・美濃の境にある白山を対象とする山岳信仰であるが、伝承によれば、元来自然崇拝の対象となっていた神体山に越前の僧泰源が登拝し開山したことに始まる。白山比咩神社は、白山修験道の拠点であり、全国の白山神社の根本社に位置付けられている。
白山神社の分布は、岐阜県、福井県・石川県と禅定道の拠点である馬場をもつ3県で全国の半数近くを占める。次いで近隣の新潟県・愛知県で、上位5県が中部と北陸地方にある。
新潟県内の白山信仰の分布は、下越より中越、中越よりは上越、特に西頸城郡や糸魚川市が古くて濃厚であるといわれている。
白山信仰は、沿岸と佐渡への海流ルート、姫川、名立川、鯖石川、阿賀野川の河川ルート、能生白山神社-関山権現-戸隠神社などの尾根ルートで越後に向かって浸透したなどと考えられている。

– 山神信仰(十二社・山神神社など) –

山神信仰は、山仕事や農業になどに関連して、民間で信仰されてきた様々な山の神が基盤となっているもの。
新潟県に多い十二神社は、名称からは熊野信仰を連想するが、約6割5分が大山衹命を祭神としており、山の神としての信仰が主流と見なされる。また、新潟県の上越地方と旧魚沼群域に集中する十二神社の分布は山神信仰の分布と重ならない。このため、十二神社には山神への信仰の要素があると見なしている。
山神を祀った神社の分布では、地域ごとの社数に極端な偏りが見られる。これについては、特定の地域で信仰が盛んであったという条件だけでなく、山仕事や農業といった信仰者の生業そのものの縮小や利益が流布された神の勧請などの条件にも着目すべきとの指摘がある。

a2 寺院(宗派別)

– 本山修験宗 –

本山修験宗とは、聖護院を総本山とする修験教団である。室町時代、聖護院は天台宗寺門派に属し、本山派と呼ばれる修験教団を成立し、近世期には、聖護院門跡とその直属の修験者・大先達・一般地方修験などからなる教団として本山派修験が栄える。明治以降は、修験道廃止により分裂と合併を繰り返しながら、現在の形に一本化された。
宮家(1986)は、「南魚沼郡は地域社会における修験者の活動実態やその機能を知るためにはうってつけの場所」、「南魚沼こそ近世以来の伝統的な修験の形態を持ち続けている地域」などと評している。
その他詳細は、19 霊山を参照のこと

– 曹洞宗 –

禅宗のひとつである曹洞宗は、座禅をすることで悟りの境地に達すると説いたもの。宗祖は道元であり、永平寺(福井県)を創建した。
上越地域には禅宗として、最初に守護上杉氏の庇護を受けた「臨済宗」が浸透したが、官寺的な性格が強く、守護の没落とともに衰退。これに対し、守護代長尾氏をはじめ武士層の庇護を受けた「曹洞宗」は長尾氏の台頭とともに上越地域に定着したとされる。
また、曹洞宗の修行僧は、常に肌身離さず白山妙理大権現の護符をつけているといわれており、道元開創の地の地元神に対し、曹洞宗は特別な尊崇の念を抱きつづけていたといわれている。このことから白山信仰が浸透していた地域は曹洞宗が浸透する地盤があったともいえる。
さらには、曹洞宗の伝播は、密教的民間信仰の宗教、または宗教的情操に支えられ、その宗教的心情の基盤の流れの上に可能となったものとの見方もある。

– 浄土真宗 –

浄土真宗は、誰もが救われる存在であると信じることによってのみ救われると説いた、他力本願が特徴。教祖は親鸞。
新潟県内では、新田開発が進んだ近世を中心に広まり、頸城平野と長岡からはじまる信濃川デルタ地帯に真宗寺院が多いとされている。
伝播の要因としては、宗祖親鸞の配流や子弟蓮如の布教、その後の上杉謙信の好遇など様々な要素による広まりが指摘されている。

特徴の成り立ちと影響の補足説明

b1 仏壇製造業の発達

経済産業大臣指定の伝統的工芸品は全国で232件(H30.11現在)あるが、このうち仏壇仏具は17件であり、新潟、北陸、東海、近畿が中心と見てとれる。
信越県境付近の市町村には「飯山仏壇」と「長岡仏壇」がある。

【伝統的工芸品の指定品目(仏壇)】

出所)出所)経済産業省ホームページ(伝統的工芸品)をもとに作成

「飯山仏壇」は越後や京都の流れをくむ絢爛豪華な金仏壇であり、金箔や胡粉盛りによる蒔絵や金具がふんだんに用いられるのが特徴とされる。生産量の50%は京都の浄土真宗様式だが、曹洞宗、浄土宗、天台宗、日蓮宗、真言宗向けのものも製作している。
また「長岡仏壇」のエリアには、長岡、小千谷に加え、十日町も含まれている。

参考 仏壇と浄土真宗との関係性
浄土真宗の勢力が強い土地には仏壇産業が発達しやすいといわれる。その理由として、「東西本願寺の分立以降はその傾向を強める。なぜなら浄土真宗の教団は、つねに宗教共同体、同朋集団を強く志向し、それは農村共同体と重なり合う。農村共同体のヒエラルキーと同朋集団の持つ平等性の重なり合いの表現記号として、仏壇が位置付けられる。」
また、長岡仏壇の説明の中で、「真宗の仏壇は宗派の本尊である仏像をまつるもの(ほかの宗派は先祖をまつるものへ変化)であるから、粗末であってはならない」などの記載がある。

参考文献・サイト

※特に参考とした文献には●を付しました

(宗教全般 - 全国)
・文化庁(2017):宗教年鑑平成29年版
・文化庁(2017):平成29年度宗教統計調査結果
●長野県(2018):長野県所管宗教法人名簿
●新潟県(2018):新潟県宗教法人名簿
・村上重良(1988):日本宗教辞典、講談社学術文庫
●山折哲雄・川村邦光(2000):すぐわかる日本の宗教、東京美術
・末木文美士(2006):日本宗教史、岩波新書
・堀一郎(2004):日本の宗教、原書房
・松前健(2016):日本の神々、講談社学術文庫
・高埜利彦・安田二郎(2012):宗教社会史、山川出版社
・佐藤裕治(2007):地理から見えてくる「日本」のすがた
(宗教全般 - 特定地域)
・地方史研究協議会編(2017):信越国境の歴史像―『間』と『境』の地方史―、雄山閣
・信州郷土史研究会(1981):信州の文化シリーズ 寺と神社、信濃毎日新聞社
・宮栄二編(1986):雪国の宗教風土、名著刊行会
・松井圭介(1993):新潟県の宗教空間 : 寺院・神社・教会の分布を通して
●新潟県立歴史博物館(2006):中世人の生活と信仰 越後・佐渡の神と仏
・金田文男(2013):越後の民俗-信仰の受容変容にみる人の動き-、三協社
●石田耕吾(1987):頸城の祭りと民俗信仰、北越出版
・上越市史編さん委員会(2004):上越市史 通史編2中世、上越市
(仏教全般)
●全国寺院大鑑編纂委員会(1991):全国寺院大鑑、法蔵館
●全国寺院大鑑編纂委員会(1991):市町村区分 全国寺院大鑑別巻、法蔵館
・山折哲雄(1993):仏教民族学、講談社学術文庫
・竹村牧男(2015):日本仏教の思想のあゆみ、講談社学術文庫
●小田匡保(2003):日本における仏教諸宗派の分布、駒澤地理№39、pp.37-58
●小田匡保(2011):新潟県における寺社の分布と地域区分、駒澤地理№47、pp13-33
(浄土真宗関係)
・山折哲雄(2007):親鸞をよむ、岩波新書
・笠原一男(1977):親鸞、講談社学術文庫
・島田裕己(2012):浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか、幻冬舎新書
・末木文美士(2014):日本仏教入門、各川選書
・田子了祐(2013):越後における真宗の展開と蒲原平野、考古堂書店
・菊池裕次郎(2014):浄土信仰の展開、勉誠出版
・浄土真宗本願寺派http://www.kireinaobutudan.jp/info/knowledge/bunpu-tiiki.html
・犬丸直・吉田光邦編、伝統的工芸品産業振興協会監修(1992):日本の伝統工芸品産業全集・第8巻 筆・墨・硯・仏壇ほか、ダイヤモンド社
(禅宗関係)
・鈴木泰山(1983):禅宗の地方発展、吉川弘文館
・鈴木泰山(1993):曹洞宗の地域的展開、思文閣出版
・竹内道雄(1998):越後禅宗史の研究、高志書院
(善光寺関係)
・信濃毎日新聞社(1999):信仰の「ふるさと」への旅 善光寺さん
・小林計一郎(2000):善光寺史研究、信濃毎日新聞社
●笹本正治(2007):善光寺の不思議と伝説 -信仰の歴史とその魅力-、一草舎出版
・牛山佳幸(2016):善光寺の歴史と信仰、法蔵館
・善光寺ホームページhttps://www.zenkoji.jp/about/
・善光寺御開帳http://www.gokaicho.com/about/about.php
(神道全般)
・神社本庁ホームページ https://www.jinjahoncho.or.jp/shinto/shinto_izanai
・新潟県神社庁ホームページ http://niigata-jinjacho.jp/column/
●神社本庁(1995):平成「祭」データ 全国神社祭祀祭礼総合調査
●岡田荘司・加瀬直弥(2007):現代・神社の信仰分布―その歴史的経緯を考えるために、國學院大學「神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成」
・岡田荘司(2010):日本神道史、吉川弘文館
(神道信仰別)
・島田裕己(2013):なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか、幻冬舎新書
・諏訪神社ホームページ https://www.osuwasan.jp/
・金井典美(1982):諏訪信仰史、名著出版
・学研(2003):諏訪大社、週刊 神社紀行通巻11号
・武光誠(2012):諏訪神社と武田信玄、青春出版社
・デアゴスティーニ・ジャパン(2016):諏訪大社、週刊日本の神社№120

更新履歴

  • 2022年6月7日 「その他の参考情報」を追加しました。
  • 2022年4月21日 ページを公開しました。