地域資源情報

20 冬のまつり

その他の参考情報

特徴の補足説明

a1 道祖神祭り(サイの神など)

– 火祭りの呼び名について –
どんど焼きは小正月の火祭り行事であるが、その名称や由来は多様である。【下表】
これら呼び名の地域分布については、複数の文献で説明があり、一定の傾向は見受けられるものの、詳細な分布は複雑であり、若干の違いも見受けられる。

【小正月の火祭りの呼び名について(一例)】

出所)平横山旭三郎(1980)、石田哲弥(2001)、地域資料デジタル化研究会(2019)などをもとに作成

– 火祭りと道祖神の関係について –
道祖神は民俗信仰の一種であり、名称はドウソジン、ドウロクジン、サイノカミなど様々であるが、日本古来のさいの神と中国の祖道からみた道祖神はもともと別物であり、他の信仰との習合があったともされる。
その形態は石像、藁人形、木彫人形など、そこに示される姿は自然石のままであったり、夫婦、草鞋、性器など、効用は悪霊・疫病払い、防災、交通安全、縁結び、子孫繁栄など、いずれも多種多様である。
小正月の火祭りと道祖神信仰が結びついているのは新潟県、長野県、山梨県、静岡県の東半分といわれているが、この分布は、男女二体の双体道祖神が多い地域とほぼ一致する。
この道祖神は神奈川、静岡、山梨、長野、群馬県で、新潟県にも存在するなど、中部日本を横断する形で密集している(このほか富山、奥三河、鳥取大山にもあるとされる)。中でも、長野県安曇野市は道祖神の宝庫として観光分野などでも積極的にPRしている。
これらの製作の多くは、長野県の高遠石工によるものとされるが、全国的に見てもなぜこの地域に集中しているのか、明確に示された文献は見当たらなかった。

– その他 –
日本の三大火祭りは、長野県ホームページでも「捉え方はいくつかある」と断り書きした上で、この祭りをその一つとして紹介している。
このフレーズは様々なホームページなどである程度使用されている一方、4か所以上確認できることから、あくまでも一説として取り上げた。
国重要無形民俗文化財(平成30年度末現在 312件)のうち、小正月の火祭り行事は8件と推定され、野沢温泉の道祖神祭りはこの1つに含まれる。

a2 その他の珍しい小正月行事

– どんど焼き –
どんど焼きでは、小屋を作って酒食や遊びを行う地域がある。地域資料デジタル化研究会(2019)によれば、奇祭とされる十日町市大白倉のバイトウで作る小屋(直径8m、高さ10m)は日本一大きいとの説明がある。

a3 地域活性化を目的とした雪のお祭り

– 十日町市雪まつり –
十日町市雪まつりの提唱者とされる高橋喜平氏は、当時、農林省林業試験場十日町試験地の主任。著書(1979)によれば、雪国の冬の生活を明るくするために、特に大人たちを雪に親しませたいとの思いから、長野県旧新野村の雪祭、十日町のほんやら洞、横手市のかまくらなどを参考にしつつ、最終的には雪の彫刻を選んだとのことであり、当時十日町文化協会の会長でもあり、会議で提案したところ賛同いただいた、などの説明が詳細にある。市内には、「現代雪まつり発祥の地」の記念碑もある。

– 六日町雪まつり –
十日町市の翌年に始まった六日町雪まつりは、南魚沼市ホームページによれば「終戦後の混乱期に復興を願い、雪像作りを始めたことが発端」とある。また、六日町温泉ホームページによれば、「昭和20年代頃から、町内住民が除雪の為に道路へうず高く積もった雪を色々な造形にして楽しむようになり、やがて雪国の風俗を象徴する雪の芸術コンクールとして町内各所で雪像の製作が盛んに行われるように。しかし、道路の無雪化など生活環境の変遷に伴い製作場所が無くなる等の不便が発生し、個別の開催が難しくなる。・・<中略>・・昭和26年より会場を1ヵ所に定め大神宮祭礼・春まつり(2/14)に日を合わせて、雪の一大祭典「六日町雪まつり」を開催するようになった」などの記載がある。
なお、十日町市と南魚沼市の雪まつりにさっぽろ雪まつりを加えて、「日本三大雪まつり」と称するホームページもあったが、あまり地元自治体などで積極的に使われているようには見受けられず、その浸透度は不明である。

a4 その他特徴的な冬のお祭り

– 毘沙門堂の裸押合(日本三大奇祭) –
日本三大奇祭については、たとえば長野の「諏訪大社御柱祭」、秋田の「なまはげ柴灯祭」をはじめ、様々なホームページや新聞記事などで10か所以上が確認されていることから、あくまでも一説として取り上げた。
平成30年3月、国重要無形民俗文化財に指定。

参考文献・サイト

※特に参考とした文献には●を付しました
(民俗全般 - 全国的な傾向)
・谷川健一ほか(1986):日本民俗文化大系1 風土と文化、小学館
・桜井徳太郎(1968):民間信仰、塙書房
・桜井徳太郎(1970):日本民間信仰論増訂版、弘文堂
・桜井徳太郎(1970):祭りと信仰、新人物往来社
・桜井徳太郎(1971):民間信仰と現代社会、評論社
・藤本良致、横山旭三郎ほか(1973):北中部の民間信仰、明玄書房
(民俗全般 - 新潟・長野)
・地方史研究協議会編(2017):信越国境の歴史像-「間」と「境」の地方史-、雄山閣
・新潟県教育委員会ほか編(2001):中部地方の民俗地図1長野、東洋書林
・新潟県教育委員会ほか編(2001):中部地方の民俗地図2新潟、東洋書林
・新潟県民俗学会編(1989):図説日本民俗誌 新潟、岩崎美術社
・真野俊和(1986):越後のくらしとまつり-上・中越の民俗-、東京法令出版
・山口賢俊ほか(1982):生きている民俗探訪 新潟、第一法規
・市川健夫(1980):雪国文化誌、日本放送出版協会
・市川健夫(2012):信州学テキスト-「日本の屋根」の風土と文化、第一企画
・市川健夫(2010)日本列島の風土と文化 第2巻 ブナ帯文化と風土、第一企画
・長野県立歴史館(2018):日常生活からひもとく信州、信濃毎日新聞社
・笹本正治(2003):飯山風土記-信濃の宝石「いいやま」、飯山市振興公社
・石田耕吾(1982):頸城新風土記、国書刊行会
●石田耕吾(1987):頸城の祭りと民俗信仰、北越出版
・石田耕吾(1989):頸城の人びとのくらし、北越出版
・十日町市史編さん委員会(1989):市史リポート とおかまち、十日町市
(道祖神関係)
・森田拾史郎(1998):道祖神―道辺の男女神、京都書院
・横山旭三郎(1980):新潟県の道祖神をたずねて、野島出版
●倉石忠彦(1990):道祖神信仰論、名著出版
・倉石忠彦(2005):道祖神信仰の形成と展開、大河書房
●石田哲弥(2001):道祖神信仰史の研究、名著出版
・山内軍平(1986):愛の神々-越後の道祖神、中央出版
・酒井幸男(1969):安曇野の道祖神、柳沢書苑
・佐久町教育委員会(2000):佐久町の道祖神
・松本市教育委員会(1993):松本の道祖神
・塩尻市教育委員会(1977):塩尻の道祖神
・信州郷土史研究会(1981):石仏と道祖神、信濃毎日新聞社
・長野県民俗の会(2018):長野県 道祖神碑一覧
(お祭り関係)
●高橋喜平(1979):雪国の人びと、創樹社
・市川健夫(2003):雪国の自然と暮らし、小峰書店
・十日町商工会議所(2011):十日町雪ものがたり120-雪とともに生きる-
・十日町市(2017):ふるさと教材 ふるさと十日町、
・飯山市教育委員会(2015):飯山の祭り、飯山市

更新履歴

  • 2022年6月7日 「その他の参考情報」を追加しました。
  • 2022年4月21日 ページを公開しました。